東京女子大学 現代教養学部 国際英語学科 国際英語専攻

「音楽イベント」をゼロから創って
東京女子大学国際英語学科3年 小柴りさ

2020年12月、私はあるプログラムに参加しました。それはNPO法人ブラストビートが12年にわたって主導している音楽×ビジネス×社会貢献をテーマにしたプログラムで、高校生、大学生が「音楽イベント会社」を設立します。そして売り上げを寄付するというボランティアです。

 そんなプログラムに参加したきっかけは友人の一言でした。「面白そうなのがあるんだけど」。2020年はコロナ禍でずっと家の中にいたのでなにかやりたいと考えていました。そこで見つけたブラストビートのプログラムをやり遂げる自信がありませんでしたが、数日悩んだ末挑戦することに決めました。

 プログラムに参加するとすぐABC3つのチームに分かれました。私はBチームに入り、新たな仲間6人と出会いました。正直メンバーとすぐには打ち解けられませんでした。初対面の高校生や大学生のメンバー、さらにはオンラインで話し合いをするので初めのうちメンバーそれぞれの口数は多くはありませんでした。

 イベントを一から作るのは想像以上に難しいものでした。どんなコンセプトか、何を伝えたいのか、どんなライブにしたいのか、はじめから考えることは山積みでした。何もかも初めての経験。長いことかかってようやく出した私たちのイベントのコンセプトは「ツナガルライブ」。音楽だけじゃないダンスや絵など様々なアートと融合したものに決定しました。しかしこれで終わりではありません。その後はさらにハードでした。ライブに必要な予算、見込める収入、アーティスト選び、オファー、ライブの配信方法等々…。書ききれないほど地道で細かな作業は毎日深夜3:00まで続き、何度も何度も心は折れかけました。それでも苦楽を共にしたメンバーの存在は大きいものでした。初めのうちは打ち解けられなかったメンバーも、このころになると一日の中で一番会話している存在になっていて、オンラインでつながりながら寝ていたら起こしたり、たわいもない雑談で励ましながら辛い日々をなんとか乗り切ることができました。

 今思えば本当に周りの人々に支えられていたと思います。メンバーはもちろんのこと、アーティストさんやブラストビートのメンターさん、関係者の方々、友人、家族、多くの人に支えられました。このプログラムで自らの成長だけでなく人の温かさを特に感じました。あるアーティストさんは私たちのためとわざわざ大阪から来てくださり、友人たちはダンスやイベントで流す動画の編集など多岐にわたってサポートしてくれました。本当の意味で彼ら彼女らがいなかったら何も成しえませんでした。新型コロナ禍という人とのつながりを感じにくい時期であったからこそより人とのつながり、人に支えられていることをひしひしと感じ取ることができました。こんなにも助けてくれる人の存在に気づけたことが私の活動の中の大きな収穫の一つでしょう。

 
ライブ終了直後にメンバー6人で撮った集合写真。筆者は真ん中左。新井菜々子Ⓒ

 チームが開催したイベントはミュージシャンが演奏する中、アーティストが絵を描くライブペイント、アーティストの生演奏と同時に流すダンス、切り絵のMVのコラボレーションを皮きりに、出演ミュージシャン三組の対談コーナー、そしてラストでライブオリジナルソングをミュージシャン全員で歌唱するというものでした。途中自己紹介VTRやラストのオリジナルソング歌唱の際に流れるMVなどライブのほかにムービーも織り交ぜながらの音楽だけじゃない複合的な音楽イベントを創り上げました。

 イベント当日、イベント開催までの時間は一瞬でした。私は出演者の誘導係として出番5分前と直前に出演者を誘導したりとスタジオと控室の間を何度も往復しました。ライブ自体は音楽スタジオの一室で行われ、仕事の合間をぬって部屋に入っては生演奏を聴くことができました。途中トラブルもありましたが、最後までやりきることができました。何か月もかけて準備したイベントは3時間ちょっとで幕を閉じました。私たちのイベントは収益を挙げる「ビジネス」と共に収益を寄付する「社会貢献」であると書きました。実際、得た収益はコロナ禍で学生を支援する学生支援団体の方に寄付されました。

 
画像はスタジオで次の演奏準備を流すオンラインイベント映像のシーン。画面中央はチームロゴ。左手奥に見えるのはミュージシャンとライブペインターのコラボレーションで描かれた作品。*配信映像から抜粋

私がこのプログラムで得たことは挑戦してみるということです。今まで私は消極的で、何かに挑戦することがあまり得意ではありませんでした。今回友人と一緒に参加したということもありましたが、初めてこのようなプログラムに参加して、いろんな世代、職種、趣味の人と交流したり、経験と知識が増えたことによって視野がとても広くなったと実感しています。経験していなければどれも得ることができませんでした。おそらく同じような経験をしている同世代の人はほとんどいないと思います。この貴重な経験を得ることができたのも、あの時挑戦しようと決めたから。悩んだけど挑戦して本当によかったです。